これまで、日本全国で遺跡の総数は、およそ30万カ所といわれてきましたが、その実数について、案内人が目にしたことはありません。埋蔵文化財行政の総元締めである文化庁が公表したことがないからと思われます。しかし、最近になって文化庁はその実数を公開しました。文化庁が公表した資料によると、総遺跡数約44万カ所です。徳島県の1627カ所から千葉県の29162カ所まで、まちまちです。平均すると1県あたり9400カ所です。遺跡の範囲をどのようにくくるのか、各県でその基準がまちまちでしょうから、単純に遺跡の数だけ比べてみてもほとんど意味をなさない可能性はあります。ここはとりあえず、日本全国に数多くの遺跡が所在するということでみておきましょう。

 さて、次に都道府県によっては、現存する遺跡と消滅してしまった遺跡のデータをきちんととっているところがあります。遺跡が消滅する要因にも色々あって、すべてが開発によって最終的に破壊されてしまったとは言い切れません。しかし、遺跡保護に意を尽くしている部局が遺跡消滅とするには、かなり覚悟がいることと思われます。案内人の経験でも、完全に開発などで最終的に遺跡が消滅したと認定できる遺跡は、ほんの数えるくらいしかありません。そのような中、全国のデータを見渡してみると、なんと埼玉県のように遺跡全体の約4割が消滅してしまったいうような信じられない数字が明らかにされています。その要因が何だったのかまでは、逐一、明らかにされていませんが開発がその大きな要因の一つであったことは、想像に難くありません。いわゆる大都市圏に消滅遺跡が多くみられるのは、その傍証の一つではないでしょうか。このままのペースで、開発に伴う緊急発掘調査が進行するのなら、大都市圏で遺跡が壊滅状態になるのは、火を見るより明らかでしょう。


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