「人々と生活と」

 昭和59年(1984)、弘前大学医学部で第49回日本民族衛生学会総会が開催されるに当たって、津軽に赴任して以来、撮りためてきた膨大な写真群の中から238枚の写真を選び、「人々と生活と」と題した1冊の写真集にまとめ、全国からの参加者に配布したものである。

 この写真集は単なる記録写真集ではなく、衛生学者としての鋭い視点から撮影されたもので、随所に的確な文が添えられていて、学術的価値が高いものと評価できる。「衛生学者としての私は、そのシャッターシーンに何かを意識しシャッターをおしたので、一枚一枚にそれなりの意味があり、記憶に残るものがある」と序文に書かれている。先生の写真を読み解く者は、撮影の意図が奈辺にあったのか、逆に試されることとなる。

 2万枚を優に超える膨大な写真は、ピントがぼけているものは殆ど無く、また、同じ構図の連続も殆ど無い。著名な民俗学者の宮本常一は、写真を撮るに当たって、「芸術写真は必要ない、1枚の写真から様々なことを読めるような写真、記録写真に徹するように」と語っていた。佐々木先生の写真も殆ど、宮本常一と図らずも同じ観点から撮影されていたことは間違いない。どの写真を見ても、隅から隅まで、ピントがピッタリあっている。その上、構図もプロ並みに素晴らしいものがある。この点については、専門家の方々に論考してもらえるとありがたい。

 写真集は、1-リンゴ、2-米、3-たばこ、4-漁、5-むしろおり、6-衣、7-食、8-住、9-水、10-子、11-祭、と11テーマに分けられ、展開していく。いずれも、衛生学者としての視点から分類されたものであろう。

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リンゴ

 リンゴづくりの作業は、雪のまだ消えぬ2月下旬からはじまった。天気の良い日には畑に出て、枝切りをし‘粗皮はぎ’といった作業をしていた。
 一面の銀世界に、リンゴの枝だけが黒いのが印象的であった。

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 5月上旬の観桜会が終わると、農家の人達はリンゴと米の作業に忙しくなります。弘前大学医学部から自転車で5分ほど行った長勝寺裏(現在の城西団地)が佐々木先生の定点観測地点となりました。

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 津軽の祭りが佐々木直亮氏を惹きつけたのは、間違いなかろう。春といえば、弘前公園の桜祭り!まずは昭和30年代の古き良き時代の祭りの様子を見てみましょう。花見蟹や声良鶏の啼合せなど、懐かしい写真がいっぱいです。

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