「−怒濤の考古学−三澤正善君追悼記念論集」発刊のお知らせ

怒濤の考古学

刊行にあたって


 平成13年1月、三澤君の死はあまりにも突然であり、未だ信じたくない気持ちを今も我々は持っています。彼の葬儀と、三周忌に参列した諸氏は、彼のために何かを残そうと語り合い、そのことにより霊前の三澤君と向かい合うことができるのではないか、と考えた次第です。とりわけ三周忌に参列した仲間達から彼の「追悼記念論集」を刊行しようという声があがり、はや2年が過ぎたところです。その間に、彼を指導した先輩、文理学部のキャンパスで語り合い、発掘調査で同じ釜の飯を食べた同年代、彼が指導した後輩、そして彼を直接知らない後輩までが彼を慕って快く寄稿され今日を迎えました。彼が亡くなられて既に5年が過ぎ、ご家族の皆様には、大変辛いものがあったのではないかと推察致します。それにも拘わらず追悼記念論集の刊行に協力され、なお一文を上梓してくださったことに発起人同期一同、ここに深く感謝申し上げます。

 思えば、彼は強烈な個性の持ち主で、数々の武勇伝を残し、さながら「怒濤のような」人生でした。それも今は、懐かしい思い出になってしまいました。昭和45年の春、入学した当時は、学園紛争が下火になっていたとはいえ、まだまだ、大きな余波が残っていました。在校生は、この余波に翻弄され、今でも当時のことを思い出すのは我々だけではないかもしれません。なかでも彼は、この余波と最も厳しく対処していた一人でありました。学生時代には、分裂した考古学の仲間達をまとめようと奔走していました。学園生活最後の春休みには、九州福岡の発掘調査現場で、「アク」の強い山形弁で熱弁をふるっていたことが思い出されます。その影響で地元の補助員さんまでもが山形弁に訛ってしまったこと、2月の体の芯まで凍てつくような夜、古墳の主体部から大量に出土した貴重な遺物の見張り番をするため徹夜で火を焚き続けたこと、夏みかんを刳り抜いた器で日本酒を飲み交わしながら、いつ果てるともしれない議論を交わしたことなどが現在でも鮮明に思い出されます。

 昭和49年の卒業後、大学に史学科実験助手として残り、後輩達の育成につとめました。今でも彼に指導を受けた後輩達が各地で調査・研究に携わっています。

 その後、縁あって昭和51年の夏に小山市教育委員会に採用され、埋蔵文化財の担当者として乙女不動原遺跡群や国指定史跡琵琶塚古墳等の調査に力を発揮し、小山市立博物館の開館にも尽力されました。いわば彼は、小山市はもとより栃木県の埋蔵文化財行政の草創期を支えた一人でもありました。しかも発掘調査時に、後輩の考古学専攻生を呼び寄せ、現場での調査指導は彼の人柄を物語るものでありました。

 私生活の上でも友人を大切にし、また酒をこよなく愛し、酒席でのエピソードに事欠かない人でした。白分をありのまま、正直に生きたというのが彼の人生だったと思います。

 ここに、若くして亡くなられた三澤君の「追悼記念論集」を刊行するとともに、過日実施した「三澤正善遺児育英基金」に御協力いただいた皆様に感謝し、彼白身が発掘調査を実施し、設計計画に携わった霊園で、奥様が彼を偲んで縄文土器を形取った墓石に安らかに眠る彼の御冥福を祈りたいと思います。

平成17年5月

発起人同期一同


目  次

【三澤正善の足跡】
・過ぎ去った年月                                          三澤 京子
・三澤正善の足跡(業績目録)                                  三澤 京子
・縄文時代後期後半の土器―県南地域を中心として―                   三澤 正善

【想い出の記】

・三澤正善さんと小山                                       岩崎 卓也
・三澤正善君に                                           竹石 健二
・三澤正善君を慎む                                        山内 昭二
・三澤正善さんとのこと                                       鈴木 勝
・三澤さんと東考研                                         鏑木 理広

【研究論文】

・道祖土焼高松窯                                         三澤 京子
・縄文時代の集落と乙女不動北浦遺跡                            鈴木 保彦
・小山市縄文時代早・前期の楔形石器
―乙女不動北浦B地点の石器群を中心にして―                      大塚 昌彦
・千曲川と鬼怒川流域を結ぶもの
―寺野東遺跡出土の縄文時代中期中葉「焼町土器」について―             寺内 隆夫
・はんつけ土器考―米代川流域の切断蓋付土器―                     成田 滋彦
・北関東中部域における縄文時代後晩期居住形態の検討(予察)
―乙女不動腹原北浦遺跡の住居と集落を中心に―                     江原 英
・栃木県南部の縄文時代後期後葉〜晩期中葉の土製耳飾りについて          井上 武
・粘板岩を割る―石包丁の素材を割り取る―                          松本 茂
・弥生時代土製紡錘車考―利根川下流域を中心として―                  古内 茂
・東京都文京区東洋大学校内出土の「装飾器台土器」について              山村 貴輝
・赤彩文様をもつ土師器杯からみた古墳時代後期の地域文化圏
―千葉県北部から出土するX字文・一文字状の赤彩を施した杯類を中心に―
                                                     石渡 典子
・古墳時代米食試論                                         小林 良光
・伊豆に見られる石丁場―東海岸部稲取地区を中心として―                小野 良光
・伊豆東浦の石丁場と江戸城 野中 和夫
・埋蔵文化財と戦跡考古学―小笠原父島 母島の事例を中心として―           新里 康
・地方に根ざした博物館を目指して―「上総博物館友の会」の活動から―         三浦 和信
・友よ埋蔵文化財に未来はあるか                                 広瀬 雅信



A4版 横書き 350頁
値段 3,000円 送料450円 計3,450円
注文書が届き次第、郵便振り込み用紙を同封して発送いたします。
申し込み先 〒030ー0963
青森県青森市中佃2丁目13ー15 三澤正善君追悼記念論集刊行会 
成田 滋彦


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