名川町水上遺跡現地見学会が開催される

 9月13日の日曜日、八戸市の南西にある名川町水上遺跡では、近隣からおよそ70名の見学者を集めて現地見学会が開催されました。遺跡は名川町の中心部から南に車で15分のほどのところにあり、土地勘がないと一度では到達できないような山間でした。今に生きる私たちからすれば、こんなところにこんなすごい遺跡が、というような印象なのですが、それは私たちの傲慢な考えかもしれません。遺跡の詳しい内容などについては、地元名川町教育委員会配布の資料を参照してください。

遺跡位置図
遺跡位置図


遺跡から西側を見た模擬風景(カシミール3D)
遺跡から西側を見た模擬風景(カシミール3D)

見学風景1
見学風景2
▲見学風景1
▲見学風景2
直線上列石1
直線上列石2
▲直線上列石1
▲直線上列石2
弧状列石
特殊組石
▲弧状列石
▲特殊組石


三戸郡名川町水上遺跡現地見学会資料
平成15年9月13日(土)
名川町教育委員会

1 調査目的  
 平成14年度に実施された道路拡幅工事に伴う発掘調査で、環状列石と思われる配石遺構が確認されました。本年度は、この配石遺構の範囲確認と記録保存を図ることを目的に発掘調査を実施いたしました。

2 所在地   青森県三戸郡名川町大字鳥舌内字水上地内

3 調査期間  平成15年8月20日〜9月9日

4 調査面積  約140平方メートル

5 調査成果 
(1) 調査概要 
 今回の発掘調査地点は、標高約154mの丘陵上に立地し、昨年度の調査区と一部が重複しています。発掘調査では、昨年度検出された配石遺構の精査と拡張部分の調査により、縄文後期前半(約4,000年前)の「大型配石遺構」であることが判明しました。
(2) 大型配石遺構 
 大型配石遺構は、径約28mの大きさで、長さ約9mの弧状列石や、4mの直線状列石、径1.5mの特殊組石などから構成されています。弧状列石や直線状列石は、石垣状に石が並べられ、2段から4段に横積みされています。こうした、石の配列は青森市の小牧野遺跡でも見られます
(3) その他の遺構 
 今回の調査では、列石のほかに、石組炉や焼土遺構が見つかっています。
(4) 出土遺物 
 遺物は、ダンボールで1箱未満となっており、縄文後期前半十腰内I式土器の破片や、その前段階の型式の土器の破片、石斧やクボミ石、鐸形土製品などが出土しています。

6 まとめ   
 今回の発掘調査で、縄文時代後期前半(約4,000年前)に構築された、大型配石遺構を有する遺跡であることが明らかとなりました。
 大型配石遺構は、縄文中期以降に東日本を中心にさかんに造られるように、とりわけ北日本では縄文後期に環状列石(ストーンサークル)が多く造られています。環状列石は、墓地説や祭祀場説などが考えられている謎の多い構築物で、水上遺跡の大型配石遺構も環状列石に類似する遺構と考えられます。
 水上遺跡は、今回調査された大型配石遺構の構築規模や形態からもみてと、縄文社会の組織力を見せつけるものであり、当時の社会の仕組や世界観を考える上で極めて重要な遺跡であると考えられます。





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