2001年10月28日、国史跡の青森市小牧野遺跡で約130人の見学者を集めた現地説明会が開催されました。クマをかたどった土製品や溶結凝灰岩を敷いた竪穴住居跡などを興味深く見学していました。

説明風景

約4000年前の住居跡

土坑

クマ?の土製品(右)左は別遺跡

クマ?の土製品(右)

約4000年前の土器

約4000年前の石製品

約4000年前の石器


現地説明会配付資料

はじめに

 小牧野遺跡は、青森市野沢字小牧野に所在し、今から約4,000年前の縄文時代後期前葉の環状列石をシンボルとする遺跡です。

 環状列石は、石に願いを込め、多くの石で輪のように並べられたもので、ストーンサークルとも呼ばれています。これまでの調査で、環状列石やその周辺から墓が見つかっていることや、祈願や呪術に使用されたと思われる遺物も多く出土していることから、環状列石は、墓の機能も含めた「葬祭の場」あるいは「祭祀の場」と考えられます。

今年度は、小牧野遺跡の内容解明を目的に、8月19日から10月19日まで発掘調査を実施しました。

検出遺構

 今年度は、環状列石の東側に2箇所の調査区域(464F)を設定し調査するとともに、昨年度調査した区域の竪穴住居跡の一部および建物跡の精査を実施しております。

 検出した遺構は、10月19日現在で、

1 竪穴住居跡…………………1棟

2 土坑・土坑墓………………29基

3 焼土遺構……………………3基

4 (仮)粘土遺構………………2基

5 柱穴………………………26基

(うち、建物跡として想定されるものが最低でも2棟)

6 集石遺構……………………1基

などが確認されています。

 いずれも、環状列石の構築時期である縄文時代後期前葉に所属するものと考えられます。

1竪穴住居跡(SI-02)

 竪穴住居跡は、列石中心から57.5m、昨年度検出した竪穴住居跡(SI-01)から6.7mの地点で径約5mの竪穴住居跡が1棟確認されています。住居跡の床面には、白い砂状もの(溶結凝灰岩)が径約3mの範囲で円形に敷き詰められており、その周囲には土手状の高まりも見られます。柱穴は、溶結凝灰岩の周囲や壁際に巡らされております。また、中央北寄りには、径約40cmの炉も確認されています。出土遺物は、床面から少量の石器が出土しています。

2土坑・土坑墓(SK-33〜61)

 調査区内からは、1m前後の土坑やそれが墓として考えられるものもが29基確認されています。

 土坑の形態については、楕円形や円形、フラスコ状などを呈するものなどが認められ、土坑の上面や内部に比較的大きい石を伴うものが目立ちます。

3焼土遺構(SF-01〜03)

 当時の地面が赤く焼けた範囲を焼土遺構と呼んでおり、今年度の発掘調査区からは、3基が確認されています。

 焼土遺構の多くは、そこで煮炊きや、肉を焼くなど調理の際に使用されたものと思われます。

 しかし、今回確認された焼土遺構のうちSF-01と称された遺構のすぐそばから、埋納されたと考えられる粘土(後述する仮称・粘土遺構)も確認されており、土器が焼かれていた可能性も考えられます。

4仮称:粘土遺構

 前記の焼土遺構:SF-01のすぐそばから、埋納されていたと考えられる粘土が2ヶ所確認されています。粘土は、いずれも白色を呈しており直径約30Bを測ります。粘土は、乾燥を防ぐため、皿状の窪地に入れ、その上に土を覆っていたものと思われます。

5柱穴(Pit-01〜26)

 柱穴は、現在のところ26基が確認されています。それらのうち、調査区北側には、10基前後の柱穴が集中しており、最低でも2棟の建物跡の存在が想定されます。

6集石遺構(SX-07)

 径約30Bの範囲内に、80点程の鋭利な剥片がかたまって出土しました。剥片は、2〜6cm程の大きさのものが多く出土しており、1cm以下のものはあまり見られません。また、剥片が出土した範囲の土を全て回収(土のう袋で2袋分)し、2mmメッシュのふるいで水洗い(フローティング)したところ、やはり1cm以下の剥片はほとんど見られませんでした。

 このことは、本遺構から離れた場所で剥片が作られていたことを示し、本遺構が石器製作址ではないことを裏付けるものでもあります。おそらく、出土した多量の剥片は、ナイフなどを作る際の素材として加工されたものと思われます。

出土遺物

 遺物は、現在までに、土器、石器、土製品、石製品あわせて、ダンボール約50箱分出土しています。

 今回の調査では、土坑(おそらくは土坑墓)の中から完形品の壷形土器や浅鉢形土器の完形品が比較的多く見られます。また、1つの土坑から、砂がびっしりと詰った土器や砂が混入した粘土塊(半焼成あるいは生焼けの状態)など、土器製作に関わる遺物も出土しています。

 石器については、石鏃や石箆、石斧が目立ちました。また、石皿や砥石などが一つの土坑から出土した例も見られます。

 土製品や石製品については、土偶や鐸形土製品、岩版類、装飾品等が出土しています。

 中には、土坑(おそらく土坑墓)の中からクマをかたどった土製品も出土しています。

 とくに、本遺跡の最も特徴的な遺物である三角形岩版の出土が多く(ほとんどが破損品)、有孔石製品と称される装飾品も目立ちます。 

 いずれも、土坑群周辺からの出土が多く、土坑の中から出土する事例は少ないようです。

 おそらく石器などとともに墓上に置かれたり、墓前での儀礼の際に使用されたりしたものと思われます。(青森市教育委員会文化財課提供)


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